Pogara M

Mojalandのほうから来ました

タグリーディングの技法

承前
これから述べるタグリーディングという読書法は、以前、Mac用タスク管理ソフトであるTaskPaperを応用して実践するタグライティングについて考えていたときにたまたま副産物としてひらめいた手法である。ただし、タグライティングがパソコンを用いた手法であり、その利点を最大限に活かしたものであったのに対して、タグリーディングはあくまで、従来の読書に若干の+αを施すものでしかないことをご了承いただきたい。


紙の書籍の利点と欠点
物体としての構造をもっている紙の書籍*1には次のような利点と欠点があるように思われる。

  • 利点:電子書籍に比して、実体的な構造をもっており、紙面の解像度やコントラストの高さ、情報がページ単位で固定されていることによる位置情報の担保、表示時間待ちがない、といった要因により、読みやすい(ように思われる)。
  • 欠点:全文検索ができない。ゆえに任意のキーワードへのランダムアクセスができない。最近になって、この欠点はグーグルブックスを使うことで補完できることに気づいたが、このサービスの現状*2を鑑みれば日本で出版された書籍にこの手法をもちいることはむずかしい。


紙の書籍を読むことの難点
それは、読み終えたあとにどこに何が書いてあったかを忘れてしまうことにある。この問題に対し、先人たちは次のような対処法を試みてきた。

  • 先人たちの知恵1:読書ノートをつける(いろんな人)
  • 先人たちの知恵2:読書カードをつくる(梅棹忠夫など)
  • 先人たちの知恵3:3色ボールペン読書術(齋藤孝
  • 先人たちの知恵4:索引

先人たちの知恵にも難点がある。「読書ノート」「読書カード」は端的にいってめんどくさい。また、せっかくつくったノートやカードを紛失するかもしれない。さらに、読書ノートはそのノートのどこに何を書いていたかを忘れる可能性がある。
これに対して齋藤孝の「3色ボールペン読書術」は従来のような読書ノートやカードをつくることをやめることを推奨し、かわりに本文に赤(=重要)・青(=注目)・緑(=おもしろい)の線をひいていく読書法を提案した。しかしこの作業は、読書ノートやカードの作成からは開放されるが、内実は本文の情報に重みづけをする作業であり、どこに何が書かれているかを(本を閉じた状態であっても)示す目印にはならない。
また索引も古くから存在する読書の効率をたかめる手法であるが、あらゆる本に索引があるわけはでなく、索引がある本でも自分が読書中にであったキーワードが索引に採録されていないこともあり、なにより索引の利用は目的の情報にたどりつくまでに何段階かのステップ*3を踏まなければならず冗長である。


タグリーディングの技法
タグリーディングとはページや段落や文の概略をごく短いフレーズで書いた付箋を貼りながら行う読書のことである。この技法をつかうことによって、あらかじめ検索を終えた状態、検索キーに目印がつけられた状態で当該の書籍を読むことから離れることができる。
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タグリーディングの実践

  • タグリーディングには横7ミリ、縦25ミリ程度ののり付き付箋(ポストイット)を利用する。
  • 本を読み進める中で気になった表現、あとで読み返したい表現を見つけたとき、その表現の中心的なキーワードを付箋に書き、行頭にはりつける。
  • ただし基本的に、キーワードは表紙または裏表紙どちらか一方向からみた時に一覧できるように書く。たとえば右開きの本を表紙から確認するばあいは、キーワードは右側のページでは付箋の裏側に書き、左側のページでは付箋の表側に書くことになる。(付箋の両面にキーワードを書く気力のある人はこのかぎりではない)

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このちょっとした作業を読書に追加するだけで、わたしたちは任意の本の中に広がる世界の一場面にすばやく戻ることができるようになるのである。



夢想
究極的には何らかのかたちでグーグルブックスが日本でも合法化される*4、もしくは(個人的には紙の書籍と並行した)電子書籍の流通の拡大などが期待されるところであるが、実現はまだむずかしいだろう。身銭を切った書籍を解体し、スキャンし、OCRをかけ、PDF化し、自前の電子書籍をつくる人も見かけるが、まだまだコストパフォーマンスがわるい。大規模な制度としての何かが普及しないかぎり、真のタグリーディングの時代はまだおとずれないように思われる。

*1:このような呼称は電子書籍が今後普及するようなことがあれば、『携帯電話』に対する『固定電話』という名称のように一般化するのかもしれない。

*2:著作権処理の関係で、日本国内で出版されたほとんどの書籍がグーグルブックスで利用できない。一部利用できる書籍もあるが、部分的なプレビューにとどまっている。

*3:索引のページをひらく→キーワードをさがす→キーワードが載っているページをひらく/キーワードが複数のページに渡るときはページを繰る、しかもこのとき、索引に掲載されたページ番号を忘れてしまうとまた索引の当該のページを確認しにもどらなければならず「行ったり来たり」な状況がが生じ短期記憶に負荷をかけることになる。

*4:実際に購入した書籍であれば全文検索が許可されるといった。